平成元年から10年の1月まで

広告代理店に勤務した私は、

次なる職場を、札幌の出版社に求めました。

社長もまだ40代と若く、

アットホームな雰囲気でした。

伸び伸びと仕事をする事が出来て、

会社も右肩上がりに伸びていきました。

また、この時は

ライバル雑誌との戦いも当然ありました。

ライバル雑誌の広告料金は、

私のいた会社の半額程度で、

常に価格競争を強いられました。

ある程度価格は合わせていくのですが、

それでも価格差は歴然としています。

まさにレッドオーシャンです。*巻末の注1参照

他社と価格競争になったら、皆さんはどうしますか?

私は雑誌の品質の差を訴えていきました。

客観的に見ても、ライバル雑誌よりも

手間暇を、かけていました。

でもこれは理屈で、言わば説得していました。

誌面を埋めるだけの仕事を、

業界ではスペースブローカーと呼びます。

付加価値の低い、仕事の仕方と言われています。

理屈先行の、この状態だとスペースブローカーです。

即ち、誌面と言う「物そのもの」を売っていたのです。

そしてお客様の話を聴く時間よりも、

自分が話す時間の方が、長い事にも気づきました。

お客様は、大手ではなく中小企業で

家づくりに、こだわりや一家言を持つ方ばかりです。

言い換えると、職人気質の方たちです。

私は、自分が話したいのをこらえて、

相手の話を聴く作戦に、切り替えました。

職人気質の社長たちの

お話を聴いているうちに

興奮?してきて、ついに口から出たのは

「こんなに想い入れが詰まった住宅を、

うちの誌面を使って世の中に発表しませんか!

広めないと、もったいないですよ!!」

私が

「物売り」から、「価値売り」に脱皮した瞬間です。

それからは驚くほど

仕事が決まるようになりました。

商品も価格も一切、変えていないのに!

お客様との会話は

広告を出すか、出さないか?ではなくなりました。

掲載する住宅が、

次の号に間に合うかどうかに、なりました。

相手の欲を満たすために、

自社の商品をどのように活用するか?

そこを意識しながら、

営業が出来るようになり、売れるようになったのです。

自尊心、優越感、認められたい等など・・・・

この欲求を満たす(=価値)を売れるようになって

営業は、飛躍的に楽になりました。

商品も価格も一切、変えていないのに!です。

「相手の願望・欲求に鈍感な人は、倒産・廃業予備軍」です。

その後、体調を崩して5年で退職しましたが、

この会社で30代を過ごした事は、財産でした。

自社の商品やサービスは、

どんな願望や欲求を満たしていますか?

注1

競争の激しい既存市場を「レッド・オーシャン(赤い海、
血で血を洗う競争の激しい領域)」とし、競争のない
未開拓市場である「ブルー・オーシャン(青い海、競合
相手のいない領域)」を切り開くべきだと説く。そのためには
顧客にとってあまり重要ではない機能を「減らす」「取り除く」
ことによって、企業と顧客の両方に対する価値を向上させる
「バリューイノベーション」が必要だとしている。そのための
具体的な分析ツールとして、「戦略キャンバス」などを提示している。

従来からよく知られているマイケル・ポーターの競争戦略が
「事業が成功するためには低価格戦略か差別化(高付加価値)
戦略のいずれかを選択する必要がある」としているのに対し、
ブルー・オーシャン戦略では、低コストと顧客にとっての
高付加価値は両立し得ると主張している。

*wikipediaから転載